芸人ヲタク一年生


2018年、私は芸人の沼デビューをしました。

 

 

きっかけはミキという兄弟コンビ。
今や世界で一番可愛い兄弟大賞においてぶっちぎりの金賞。愛おしさしかない。

 


昨年のアメトークへの出演を機に気になり始め、同年のM-1を観ていた時にふと「現場で漫才が観たい」と思い、その瞬間の勢いそのままにチケットを購入。
ヲタク気質の人間は自分稟議書を通すスピードがとにかく早い。爆速。
幼い頃、地元の会館で新喜劇を観たり、修学旅行でルミネに行ったり、友達に誘われて出張お笑いライブ的なものに行ったことはあったにせよ、自らの意思で観たいと思って行動に移したのはこれが初めて。
結果、人生の幸福度は増しまくっているので、ミキには感謝しかないです。

 

 

 

 


実際に現場で漫才を観て「また来たい!」となった私は、ひとまず以下のことから始めてみることにしました。

 


①ミキは大阪なんばにある漫才劇場というところに所属しているので、そこに通ってみる

 

②ミキが出演している公演に行きながら、他に好きな芸人さんを見つけてみる

 

③とりあえず月一回は劇場、もしくはなにかしらのお笑いの現場に行ってみる

 


この三点。

 

 

 


まず①、大阪のなんばには漫才劇場という若手の芸人さんが毎日公演を行っている、非常にありがたい場所が存在しています。
劇場所属のうんぬんかんぬんについては割愛しますが、ひとまずここのスケジュールをチェックしていればミキの漫才が楽しめます。

 


続いて②ですが、漫才劇場での通常公演は基本バンドで言うところの対バン形式です。
二組、三組なんていうレベルではく一回の公演で何組ものネタを一気に観ることができます。
好きなものは多いに越したことはない精神の無節操ヲタクなので、ミキを軸に周辺の芸人さんから好みの人達を探すことにしました。

 


最後の③は、長年なにかにハマり続ける暮らしをしていると「これは帰ってこられるコンテンツか否か」が判断できるようになってくると思うんですよ。
っていうかなる。本能が何からを感知する。
初めて現場に行った際に、恐らく帰ってこられない気がしたので、確実に楽しみ方が変わるであろうM-1への対策として決めました。
こういう書き方をすると大袈裟ですが、どこか限られたシーンだけでも把握しておけば、より大会が楽しめるだろうなと思ったので。

 

 

 

 

こんな感じのスタンスで、芸人ヲタク一年生をスタートさせた私。
実際に一年を過ごして感じたことをまとめました!

 

 

 

 

【自分の好みがわかった】
これはなににおいてもそうですが、色々なネタを観ることで食べ物や洋服の好みのように、こういう系統のお笑いが好き、ということがハッキリしてきます。
私は正統派のしゃべくり漫才が好み。
ちなみに「俺○○やるから、お前○○やって」みたいなものはコント漫才と呼ばれます。
あと、職人芸みたいなものに死ぬほど弱い。
プリマ旦那がちょいちょいやってくる「ありがとうございました」と同時にベルが鳴る、驚異の時間ピッタリ芸とかすごい興奮する。
客席がちょっと引いてた。
KKPのgood day houseの3階と同じくらい引いてた。
コントよりは断然漫才が好きですが、好きなコント師だってもちろんいるし、来月はコントだけの企画にも行くので、じゃがりこはサラダがダントツ好きだけど、チーズもじゃがバタもめちゃくちゃ美味しい、みたいなお話です。

 


【面白くない芸人などいない】
笑いは結局個人個人のツボです。
そのツボにハマる人数が多いか少ないかだけの話なので、極論面白くない芸人などこの世には存在しないんだろうな、と考えるようになった。
劇場で大人気の芸人さんであっても、自分のツボでなければ全く面白いと感じないし、逆に周りが退屈していても、自分のツボであれば死ぬほど笑える。
「あの芸人つまらないよね」とそれに準ずる言葉は、現場に足を運んだことによって私の辞書から姿を消しました。平和。

 


M-1M-1
テレビで観る程度にしかお笑いに触れていないと、全芸人はM-1で優勝することを目標としている、くらいのことを考えがちだと思うのですが、実際は全くそんなことはなかったです。
エントリー理由は様々だし、大会に対する意識も様々。
ゆにばーすの川瀬名人のようにM-1で優勝したら芸人をやめる」と言い切る人もいれば、お祭りだから参加している、今あるネタでどこまで行けるか試したい、勝ち進むことで知名度が上がればいい、という人もいるし、相方が出たいって言ってるから付き合ってるだけ、なんて人もいます。
ミキの二人も、今年はそれほど優勝にはこだわっておらず、自分達のテレビ出演をきっかけに劇場に来てくれる人が増えたらいい、という日々の活動スタンスの延長から継続してエントリーをしたみたいです。
私は出待ちも接触イベントも興味がないけれど、この石毛輝的思想を持っていることを知ってからは、きっかけを見つけて「ミキの漫才をテレビで観て劇場に行くようになりました」ということだけは本人に伝えたいなと思っています。

 

また、M-1は漫才ではあれど漫才とは別物だということを知りました。
多くの芸人さんがM-1「競技」と表現するのですが、本当にそうだなと。
陸上に短距離・長距離、砲丸投げ槍投げ、と似て非なる種目があるように、漫才とM-1もまた似て非なるもの。
勝ち上がってくる芸人さんは間違いなく力のある人ではあるけれど、長距離走者が短距離で、槍投げ選手が砲丸投げで表彰台に立てるかというと必ずしもそうではないはずです。
芸人さんにもそれぞれ得意種目があるので、M-1だけを基準に量るのはとんでもなくもったいない!

 


【テレビに出ている芸人さんは一握り】
大型フェスに出ていなくたって、Zeppツアーをやっていなくたって、良いバンドは山ほどいるんですよ。みんな知ってると思うけど。
それと同じで、テレビに出ていなくても面白い芸人さんは数えきれないくらいいます。
かつて一発ギャグ等で一世を風靡し、世間的には消えたと思われている芸人さんも、劇場ではしっかりと漫才やコントをやっていて、そっちが本当の姿だったりするし、それがまぁ面白い面白い。
あとよく「劇場ではテレビでできないネタをやっている」なんて言葉も耳にしますが、あれは別に過激な内容だけでなく時間的なこともかなり大きく関わっていて、好きなバンドがテレビに出て好きな曲をやったけど、最高のCメロがカット!なんでじゃい!みたいな経験、みなさんありますよね。
テレビで観た、あなたが面白いと思っているそのネタ、フルサイズじゃないですよ!
長尺の漫才が持ち味である芸人さんは、なかなかテレビでその本来の面白さを堪能することができません。
私はなんにも知らなかったんだな、と通いながら痛感しました。

 


【吉本は初心者に優しい】
行ってみよう!から実際に行くまでの流れがどちゃくそにスムーズ。田舎の人間が初めて動く歩道と邂逅した時くらいの感覚。
チケットよしもとという専用のチケットサイトからは芸人の名前はもちろん、開催地や劇場からも公演検索が可能。
吉本に特化してるおかげで、他の情報も引っかかってきちゃって検索結果からさらに探すのが大変…なんてこともなし。
発券もファミマのファミポートに専用のボタンがあるから迷わない。
新しい現場に行く際に発生しがちな「チケットってどうすればいいの?」問題を気にしなくていいのは、近くに有識者がいないド新規にとって最上級にありがたいことです。
課金することでプレミアム会員になることもでき、優先的にチケットの申し込みもできるようになります。
私はもちろん、余裕の年間契約プランです。金で殴れ。
さらにラフピーというアプリを入れて連携することでポイントも貯まる!
この一年でなんだかんだと1000ptちょっと貯まりました。

 


【専用劇場は強い】
AKBグループでもよく聞く専用劇場ですが、これを持っているコンテンツの強さを改めて実感しました。
専用なんですよ、専用。
だから365日、事務所関連の公演をずーっと入れ続けることができるんですよ。
バンドにしろジャニーズにしろ、地元やその近郊に来てくれるのを待ったり、その一日のために全力でスケジュール調整をしたり、現場に行くまでにみなさんかなり努力をされているはず。
しかし、専用劇場を持つと半端ない数の公演数を打つことができるので、そこまで行かなければならないにしろ、自分の都合のいい日に入ればOKくらいの気軽さで予定を立てることができるようになるんです。
午後から予定が入ってしまった!となれば午前中の公演に入ればいいし、その日はまるっと予定が!となったら別日を取ればいい。
選択の余地がありまくるのは私のような掛け持ちにとって大きなメリットです。
お笑いとは別の用事で大阪へ行く際は、必ずと言っていいほど劇場の予定を入れています。
公演数が多いことでお客さんが分散し、前日でも簡単にチケットを手に入れることができる、というのもバカデカメリット!

 


【基本時間厳守】
他の事務所のライブはわからないのですが、吉本の公演は基本時間ピッタリに開演をし、予定されている時間内でキッチリ終演します。
これは先の半端ない公演数にも絡んでくるのですが、一日で何回も公演を行うため、とっとと客出しをして次の準備をしないと間に合わないんですよね。
しかしこれが遠征民にはありがたい!
帰りの電車やホテルのチェックイン時間の目途が立つって助かりませんか?
それこそハシゴをする場合にも大助かりです。
些細なことかもしれないけれど、この一年たいぶ命拾いをしました。
でもバンドはこれからも開演は10分くらい押してほしい。もうそこの生活スタイル変えられない。

 

 

【お客さんに対してなにかと手厚い】
芸人のヲタク、引くくらいお金がかかりません。
日頃の芸人さんのトークから吉本はヒドい会社だ、というイメージが強いかと思いますが、お客さんに対してはかなり手厚いなと感じました。
そもそもお笑いの世界ではチケット代が1500円~3000円くらいで、グッズも単独公演を打たないかぎりそうそう出ません。
DVDが頻繁にリリースされるわけでもないし、一発で出ていく額が少ないっていうのは趣味を継続していく上でも助かるんじゃないでしょうか。
ただ、私のように「推しの給与明細の額面を上げることに喜びを感じるタイプのヲタク」にとっては正直物足りないです。
出待ちして差し入れ、とかほんとどうでもいい。
そういうもんをテメェの金で好きなだけ買えるようになってほしいんだよこっちは!!
私の金で4パチMAX!!万発出して酒を飲め!!!!

 

手厚い、というのはもちろんお金の面だけでなく、無料で荷物を預かってもらえたり、場内のロッカーが300円でこのデカさ!?みたいなのだったり、ちょっとした困りごとにも個々に対応してもらえたり、お子様用のイスが用意されている、ありとあらゆる割引やキャンペーンを行っている等々。
こういうのあればいいのにな、というサービスはほぼ存在しています。
お客さん、こういうのあったら嬉しいよね!みたいなことをガンガン打ち出してすぐ形にできるって、企業としてすごくないですか?
この点に関しては、芸人側のやりたい!もポンポン形にしてくれている印象で、芸人さんがポツリと呟いた企画が翌月には正式に形になって「とりあえずやってみます!」とゴーされていたり、平日には芸人の趣味にかなり偏った正直集客とか考えてねぇだろみたいな企画が開催されています。
年2回しか活動してないチーム今別府JAPANのファン感謝祭とかだいぶ行きたい。
ファンでもギリ楽しめるかどうかみたいな企画を平然とやってくるの最高。
比較的運営が恐ろしめな畑も耕しているので、運営と所属芸人とお客さんとのトライアングルが大きすぎず、ちょっとホッとできるいい国だなと思っています。

 

 

 

 


こんなところでしょうか。
通い続けた漫才劇場によりスポットを当てればもっと書きたいことは沢山あるのですが、それは「劇場行ってみようかな」とか「劇場楽しかったからもうちょと知りたい」という方に向けてのお話になる気がしているのでまたの機会に。
シャッフルネタのくじ引き段階で笑えるようになる、とか新しい幸せがそこにはある。

 

私が最も愛しているしゃべくり漫才は、たぶん現代のテレビに向いていません。
自分自身もだけれど、今のテレビってなにかをしながら観る、っていうことがほとんどじゃないですか。
リアタイしてツイッターで呟きながらドラマ観るの楽しいし、それきっかけで盛り上がってる番組もいっぱいあるし。
そうなってくると、ちゃんとやりとりを聴いていないといけない漫才よりも、見た目にインパクトのあるキャラモノやすぐ耳に届くリズム系のネタ、一発ギャグの方が視聴者の興味を引き付けやすいと思うんです。
別にそういうものを見下しているわけではなくて、やっぱり事件は現場で起こっているんだなと再認識した一年だったということです。
会議室で全部わかったような顔してたらダメだなぁ、と。
何気なく踏み出した一歩で素晴らしく愛せるものが一つ増えたの、どう考えてもハッピーの満漢全席。

 

 


とにもかくにも、芸人、とりわけ吉本の沼は門戸が広いどころかガバガバです。
ファン同士もいい感じに殺伐としてて、距離感あるのでそこが楽。
マジに月一回のペースで劇場行ってるので、行ってみたいなぁという人は遠慮なく声をかけてください。
私はもうどの公演に入っても幸せになれる程度には飼いならされているので、あなたのお好みに合いそうな芸人さんが出演している回に一緒に行きましょう。
〇〇さんの顔が好きだから生で拝んでみたい!でも全然問題なしお!
私にも顔だけ一等賞の芸人いるから!!

 

 

一年相当楽しかったなぁ。
顔を洗う、歯を磨く、ライブハウスへ行く、と生活の一部になっているバンドと別世界高精細フルCGが織りなす夢のワンダーランドであるジャニーズ。
そして、向いの工業高校こと芸人。
趣味の掛け持ちっていいね。

 

 

おしまい